栄誉士の先生

栄誉指導を受けていた時期がある。

私は統合失調症で、クリニックで栄誉指導を受けていた。

担当の女性の先生には小さなお子さんがいて、お子さんはアスペルガー症候群だと聞いたことがある。

私は栄誉指導を受ける目標を「昔履いていたパンツを履けるようになる」にしていた。

ある時、栄誉士の先生は「昔履いていたパンツが履けることがなんだというのですか。みひーたさんは幸せじゃないですか」と言った。いつもは優しい先生がそんな発言をしたのは、きっとお子さんのことで大変だったのだろうと思う。それも事実かはわからないけれど。

人の悩みは他人と比べられない。

私が統合失調症になり、これまで生きて、どれだけ泣いたかわからない。たとえ目標が「昔のパンツを履けること」だったとしても。その背景にはたくさんの苦悩があった。誰とも比べられない苦悩が。

先生はプロなのだから、そんな発言をすべきでないと腹を立てた。私は黙って、その先生から離れることにした。栄誉指導を受けるのをやめた。

 

それからずいぶん時間が経った。

今になってわかるのは、その先生も一人の人として、母として苦悩していたこと。

あの時、患者という立場を越えて、先生にかけられる言葉があったのではないかと思う。人としてかけられる言葉が。

この世界はたくさんの役割でできていると学んだ。先生の役割。患者の役割。母の役割。社長の役割。社員の役割。店員の役割。

でも最後に残るのは人対人。いろんな役割を持つ一人の人。苦悩を抱えた一人の人。

 

そう考えたとき、あの時に戻って、優しい言葉を先生にかけられたなら。

 

時間は戻せないから、これからの自分が変わっていけるといい。変わっていきたい。